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Information about the CFC (Cardio-Facio-Cutaneous) syndrome

[報告] 第3回ヌーナン症候群シンポジウム 第4回コステロ症候群・CFC症候群シンポジウム 合同シンポジウム

      2016/09/26

2016/09/22 コクヨホール(品川駅近く)

個人のメモですのでミスや誤記がある可能性をご了承下さい(文責:中村聡史)

司会進行は東北大学大学院医学系研究科の青木洋子先生.今回は100名定員の予定だったが,それを超える120名程度の参加者だったとのこと.

私としては前回の「コステロ症候群・CFC 症候群 第 3 回シンポジウム」に引き続き2回目の参加でした.

なお,写真などを抜いた資料をPDFなどで配布してほしいと思って質問したところ後ほど参加者に送付される予定とのこと(自分も心当たりがありますが,直前まで資料を修正したりすることが多いから間に合わないのは仕方ないですよね.ただ事前に言ってもらえると撮影パシャパシャしなくてよかったので助かったかも).

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14:00 開会のあいさつ(国立成育医療研究センター松原洋一先生)

これまでは別々に実施してきたが,今回は初めて合同のシンポジウムとして実施.
この10年に色々なことが分かってきた.低身長向けの治療も日本で可能になってきつつある.それについても報告する.

 

14:05 ごあいさつ(日本医療研究開発機構 戦略推進部 難病研究課 古澤嘉彦先生)

日本医療研究開発機構.略称はAMED.2015年に発足したもので,研究を推進するわけではなく,研究者の支援を行う組織.日本特有の縦割りで,省庁ごとに分割されうまく動かすことができない問題を解決するため,3省庁から予算を獲得して(つまり連携した形で)運用するという場.

日本は基礎研究に優れているけれど,なかなか患者に届かない問題があった.基礎から臨床まで落とし込むことの難しさを補うというのがミッションのひとつ.青木先生が実施されている「病態解明と治療方法開発」は,その両者に取り組んでいるもののため支援している.

研究支援のための枠組みとして予算獲得の機会が別にあるというのは重要だし,解明だけじゃなくてその治療方法について取り組むことは家族としては気になるところなのでありがたい.

 

14:10 研究班の活動報告(東北大学 青木洋子)

シンポジウムについては2010年からこれまで5回実施.初めての参加のひとから,4回近く参加している人まで様々の模様.

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ヌーナン症候群類縁疾患(ヌーナン,コステロ,CFC)遺伝子に違いあるが似ている.かなり遺伝子についてはわかりつつある.ヌーナン症候群はPTPN11が多数,コステロはHRAS,CFCはBRAFが主.また,全体を通して心臓に何らかの疾患があることが多い.

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RAS/MAPK症候群(アメリカではRasopathiesラソパシーと呼ばれる)のヌーナン,コステロ,CFCについては似ている.外から内部の核に対する伝達経路に何らかの問題があり,発症する.

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つまり,同じ木の幹の中にあり,症状が枝葉で分離していくようなイメージとなっている.

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現時点で変異同定が60%(頻度の高い部分をまず調べており,そこで60%を同定できている.診断依頼して半年程度で結果が返ってきている人というのは,この60%に該当している.結果が返ってこない人はそれ以外の原因遺伝子の可能性あり),一方変異なしが40%.つまり40%はまだわかっていない.これについては,新しい原因を調べている最中.

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ヌーナン症候群および類縁疾患の患者の数

  • ヌーナン症候群:553人(過去の調査),現在300程度
  • コステロ症候群:54人(2009年),現在50程度
  • CFC症候群:99人(2009年),現在100を超えている程度

 

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個人的には同定技術の進歩によって,肌感覚的にはもっと増えている印象.特に,CFCのお子さんはよく見る気がする(単純にブログなどで観測できる人が増えているから,多く感じてるだけかもしれない).なお,希少疾患の登録をしたけど,それで人数を把握できていないのかということについて質問したところ,まだまだ十分には集まっていないとのこと.周りに働きかけて,ぜひ登録してほしいとの回答.

原因遺伝子により,低身長,肥大型心筋症,肺動脈狭窄がかわっているらしい.こういう原因遺伝子と症状の関連性が明らかになっていくと,診断された段階でどのような危険性があるのか,どういうことを注意するべきかなどがわかるようになると期待できるのかも? その解決策まで出てくると親としてはうれしい.そういう意味で,さらなる技術の進歩に期待したい.

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遺伝子検査をやってもらって結果が出ていない.だから,遺伝子検査を他でやって結果が出ることはあるのか?という質問について,東北大学は頻度の高い部分を特に調べている.結果が出るまでに時間がかかるが,最近見つかった新しい原因遺伝子が様々にあるため(ヌーナンについてRIT1,RRAS,RASA2,A2ML1,SOS2,LZTR1が該当することが明らかになったらしい),これを解析中とのこと.なかなか結果を返せていないひとに対して,しばらく待ってほしいとのことでした(半年程度で結果が返ってくることが多い中,親御さんの中には1年経ったんですがまだ結果が…という方もいらっしゃいました).

色々な症状が起こる理由はなぜなのか?という問題について,モデルマウスを作製し,なぜ症状が出るか,そしてどんな薬が効くか調べている.親としては,ぜひとも効く薬が少しでも明らかになっていってほしいところ.

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海外には色々な支援団体がある

国内ではおでこちゃんクラブ(今年度いっぱいで閉会).他には東北大学の青木先生のグループでThe RAS/MAPK Syndromes Homepageを運営しており,やや滞り気味だけど,発信している.家族側としては,ぜひもっと発信を増やしてほしい(とはいえ,研究が忙しくてなかなか発信が難しいのも理解できるのだけれど….一般向けに翻訳してくれる人が必要なのかもなぁ….ブログを中心として緩やかにつながって情報発信がなされていくとよいのかも?)

 

14:20 ヌーナン症候群の健康管理(神奈川県立こども医療センター 黒澤健司先生)

ヌーナン症候群について.ヌーナンも遺伝子により症状の幅がある.先述の通り,PTPN11が50%.ただ,遺伝子で診断つかないケースも~30%ある.

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どうやったらヌーナン症候群として診断されるのかという臨床診断基準が,ヌーナン症候群の診断基準と診療指針の中で定まっている.

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ヌーナン症候群については,臨床症状と健康管理について,下記の点から注意する必要がある模様.これをもとに健康管理につなげていってほしい.

  1. 低身長:成長曲線などについてほかの先生から説明があるので省略.
  2. 先天性心疾患.肥大型心筋症:肺動脈弁狭窄 50~90%,早期からの小児循環器の専門医の受診が必要
  3. 眼科的問題:斜視48-63%,屈折異常60-70%(3歳ごろ~就学前),白内障8%(視力などの影響がある.1歳ぐらいまでには評価してもらうべし),眼振9%):眼科受診の必要性(小児に詳しい眼科の先生にお願いする)
  4. 血液学的異常:凝固異常(50-89%)・出血傾向(歯科治療で出血が止まりづらかった)→凝固因子の検査に向け注意する必要がある.内出血をしやすく常にあざだらけというのは凝固異常の特長でひどくはならない.ただ,歯科治療や大手術など手術の時には事前に調べておく必要があり,医者とともに対応を考える必要がある.また,出産のときにも注意.
    なお,検査スクリーニングを行うことで,一般的な凝固の検査をするなどしてほしい.
  5. リンパ管系の異形成:
    胎児期:胎児胸水,乳び胸,胎児水腫,頚部リンパ管腫 → 妊娠・分娩管理(次世代への影響として)
    成人学童期:末梢性のリンパ浮腫(ひざから下).弾力のあるソックスで予防するなど.ステロイドなどの投与は効果はないかもしれない?
  6. 泌尿・生殖器系:男性の停留精巣は60~80%.泌尿器科を受診して精査すること.
  7. 発達:全体の1/3程度に遅れが目立つ.特に言語発達の遅れがあるため,早期の発達評価,療育参加をするとともに,聴覚検診を行う.また,成人期には鬱傾向もある(全容は把握されていない)
  8. 遺伝の問題:常染色体優先遺伝病(親とは一致しない.子供の方が軽いことも).同じ家系としても個人差が大きく,体質としてとらえるべき.体質という考え方は想定外だった.

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(Q) どんな科を受けたらよい?  (A) 内分泌の先生は少なくとも.また,遺伝のことをある程度把握している先生を.

(Q) 最新の医療情報を得るには?  (A) このグループの情報などを確認するのが重要(Gene Group?もある.(素人向けになんかないんかな?)).

(Q) 親から遺伝したケースはあるの?  (A) 6割は遺伝異常.1~2割は親子遺伝.体質としてとらえる.

 

14:35 コステロ症候群・CFC症候群で注意すべき合併症(大阪府立母子保健総合医療センター 岡本伸彦先生)

それぞれ特有の合併症をもつもので,日本では2万人に1人程度(これはヌーナンも含めた数?).CFCは数名受診しているのでもっと多いはず.また,遺伝子検査をしていない場合や,この病気を想定していない場合に,原因不明の発達遅滞・てんかんと診断されている可能性が高い.なお,男女比は1:1.

コステロとCFCは見た目で割とすぐ判断つく.

  • コステロ症候群:頭が大きめ,耳が厚く後方回転する,心臓関連の合併症が多い.過敏がある.体重が増えにくい.
  • CFC症候群:頭が大きいけど形が違う傾向あり.毛髪が薄い,眉毛が薄いのが特徴.斜視が多い.

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発育と体重増加は標準と大差がない.また,コステロは大きく生まれることが多い.新生児期からの哺乳障害,頻回の嘔吐のためチューブ栄養を要する例が存在.胃食道逆流症の合併あり.乳児期は体重増加が遅れるなど.体重増加不良が顕著な場合は胃瘻の必要性も.

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筋緊張が低下するため,発達の評価を3歳ごろから理学療法(PT)を行っていく.立位は2歳以降,歩行は3歳以降,初語は2歳以降.

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そのほかについて

  • コステロ心理面:精神運動発達遅滞あり.IQは47~85(平均60).乳児期の強い人見知り,音や触覚刺激への過敏性,不眠傾向.
  • CFC症候群 循環器系:肺動脈狭窄,心房中隔欠損,心室中隔欠損が多い.心肥大は40%.数年後に肥大が生じる場合もあり.不整脈の例あり.大動脈や弁に問題がある場合も.
  • コステロ 循環器系:心房性期外収縮,肥大性心筋症,肺動脈狭窄など.CFCと類似?

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  • 眼科・耳鼻咽喉科
    • 斜視・近視や乱視などの屈折異常,眼振などがみられる.定期的に眼科の診察を受けておく必要がある.
    • 聴力障害や滲出中耳炎の合併があるため,聴力検査もしっかりと.

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  • 神経系:特にCFC
    • CFCは赤ちゃんのときに点頭てんかんになることが多い.半分程度(うちの息子も同じ.これが本当になくなってくれたらなぁ…).一瞬びくっとしたような発作が続く.
    • ただ,幼児期にならなくても思春期以降にてんかんが生じることもある.発作を疑えば,脳波検査を実施する.てんかんの治療は一般的な治療と大差ない.

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  • CFCの皮膚,外胚葉系
    • ほくろが多いが悪性化の報告はなし.皮膚がざらつく,頭髪は疎でカール.皮膚は柔らかいなど

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  • 泌尿器,生殖器
    • 停留精巣の頻度が高いため適切なタイミングで手術を
    • 水腎症,膀胱尿管逆流,腎孟拡大などもあるため,腎尿路系を超音波でちゃんと検索しておく
    • 尿路感染症に要注意
    • コステロでは膀胱腫瘍の可能性も
  • 血液,腫瘍系
    • CFC:急性リンパ白血病の疾患例の報告あり.胚芽腫の報告あり.固形腫瘍はまれ
    • コステロ:内臓・膀胱・卵巣腫瘍.また,乳頭腫出現など.定期的なチェックが必要.膀胱移行上皮癌になることも.膀胱も含めたエコーを受けるべし.
  • 頭蓋縫合早期癒合症(今回の重要な点)
    • 継ぎ目が通常はあり,癒着は本当は遅いんだけど,すぐに癒着してしまう.また,癒着してしまってて,頭が長くなる.
    • CFC症候群で20人中少なくとも6人が狭頭症だった.手術後の経過は良好.ヌーナンも一般より明らかに多い,コステロはなさそう?
    • 頭痛を訴えるとき,眼球が突出してきたとき,頭蓋の形態異常などに注意.なお触診でわかる模様.触診で怪しいと感じた時に3D-CTスキャンをとってもらうなどで対応する.MRIや通常のCTではわからない.
    • 重要な合併症であるにも関わらず見過ごされていた?手術が必要らしい

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  • まとめ
    • CFCはてんかん,摂食障害,過敏性が問題.また,これまで注意されていなかった頭蓋縫合早期癒合性(狭頭症)が多く今後注意するべし.
    • コステロは不整脈,腫瘍に注意
    • 両者ともに皮膚障害も多い

(質疑)ALPが5000を超えるなどあまりに高すぎる場合は,腸管?の調査などを.

 

14:50 ヌーナン症候群とからだの成長について(浜松医科大学 緒方勤先生)

ヌーナン症候群 疾患特異的成長曲線を作成した(これのCFC版をはやく!).これがあることによって,どのように低身長に対応するか,どのタイミングでホルモン治療(GH:成長ホルモンの治療)をやめるかなどを判断することが可能.

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ちなみに,親から想定される身長が,ヌーナンでなかったときにどうなのかという目標身長をもとに色々と計算したらしい.

  • 正常身長で生まれ1歳までに-2SD,男12,女10までほぼ-2SD.そのあとに成長スパートの遅れがある.正常身長もいる.PTPN11でやや小さい傾向あり?
  • 絶対値が2SD以内を経験的に正常と考える.-2SD以下は2.3%.-2SDがヌーナン患者の中心値.ヌーナンの患者の半数が低身長になる.それ以外は低身長にならない.

正直この話は置いてけぼりになってしまった.まぁ,重要なのはとりあえず今まで日本にはなかった成長曲線ができたということ.これにより,低身長の改善においてホルモン治療のガイドラインとなるものができたということだと思います.

なお,アメリカで作られているものと比較してどうだったのかと質問したところ,似たような感じだけれど人種などの違いで数センチ,数キロ下回るとのこと.CFCの成長曲線のアメリカ版があるが,それも同様に考えられるかも?

なお,ヌーナンでは腫瘍になることがあるので,成長ホルモン治療のためのガイドラインを今後作っていくとのこと.

(質疑)今現在伸びていればそのまま身長は伸びていくのかについて? 治療してもしなくても結果は変わらない.成長ホルモンにより小さくなる可能性もある.

ちなみに,成長ホルモンという言葉は危険とのこと.生理的補充をするだけであり,成長ホルモンの「成長」という言葉からイメージする「大きくなる」というのは必ずしも意味しているわけではない.むしろ,小さくなることもあるとのこと.

 

15:05 成育希少疾患の症例登録について(国立成育医療研究センター 深見真紀先生)

データを集めている.ぜひ登録をしていってほしい.まだ十分に集まっているわけではないので,知人に広めてほしいとのこと.

 

15:10 患者さん・ご家族から質疑・懇談

おでこちゃんクラブ代表より,息子が21歳になりましたとの報告.

  • 当初は経管栄養.3歳から食べれるようになった.4歳で療育施設で好きなビデオを見ながら楽しんで訓練を受けていた.ウォーカーで行動範囲が広がり,9歳からバギー,15歳では普通に歩いて階段を上って花見などもできた.
  • 現在週に2回パンの販売の仕事をとても楽しんでいる.座れなかった子供も90分間座って作業できるようになった.
  • つらく,心配だったけど,色々助けてくれる人がいた.優しい世界である.心配しなくてよいよとのメッセージ.
  • おでこちゃんクラブは今年度いっぱいで閉会とさせてもらう予定.人数が急に増えすぎたこと,両立が難しいことなどが理由.
  • これからもやっていきたいという話があり,ヌーナン症候群を抱えた本人たちによるブログもはじまった「あおぞら一歩」

 

妻が新しい家族会をつくるということであいさつ.

  • おでこちゃんクラブで色々と光をもらい,助けてもらった.だからこそ,なんとかして家族会を作っていきたい.
  • 目的は年に1度の家族会を実施すること.
  • できることは限られているため,できるだけ省力化していく.紙の会誌はとてもじゃないけど力が足りないので,ウェブにて発信していく予定.システムは私が担当.
  • 下記のウェブページにて,今後の展開について発信していく予定.

各自懇談.色々と情報交換させていただきました.西は愛媛や神戸から,北は群馬などからいらしてた方もいたようでした.今後ともよろしくお願いいたします.

 

16:00 閉会の挨拶(東北大学 青木洋子先生)

全員での写真撮影ののち,閉会のあいさつを経て終了.

BADUIを集めて整理した「失敗から学ぶユーザインタフェース」が発売されました

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